資源調達システムの基本的パターン
資源調達システムの基本的パターン

資源調達システムは、垂直統合型、ネットワーク型、市場型の3種類に大別できることになる。

製錬企業などが垂直統合によって支配する鉱山は「キャプティブマイン(captive mine;自社専属鉱山)」と呼ばれる。「キャプティブ」とは「専属」という意味であり、資本的に独立した企業間の関係的契約による排他的取引関係の場合を含んでいる。この場合、厳密にいえば「垂直統合」ではなく「ネットワーク」の範疇であるが、実際には製錬企業が所有している場合(垂直統合)が大部分であるので、本書ではとくに必要がない限り、「キャプティブマイン方式」を垂直統合と同義として取り扱う。

20世紀後半の日本の場合、海外の採掘企業(サプライヤー)と国内の製錬・精製企業との長期契約ベースの継続的取引による、ネットワーク型の資源調達システムが一般的である。ひとまずこれを「長期契約方式」と概括しておこう。資源サプライヤーヘのコミットメントの程度によって、「単純輸入(単純買鉱)」、(融資買「開という3つの形態に再分類できる。融資輸入とは典型的にイヤーヘ資源開発資金を融資し、産出した資源の現物によって債務を相殺していくという手法であり、開発参加とは海外資源開発プロジェクトに資本参加をして輸入する資源の権益を確保するものである。融資輸入と開発参加の2つを総括して「開発輸入」と呼ぶ。これに対して資本関係のない海外資源企業から市場価格で輸入する方式が「単純輸入」である。

このネットワークにおいて取引される資源の銘柄や数量を最終的に決定する一中核企業は製錬・精製企業である。だが、ネットワークの形成および維持にかかわる業務のかなりの部分は総合商社に委託されている。ここで特筆すべき点の第一は、総合商社はサプライチェーンのなかでは対日輸入実務を担当しているにすぎないが、むしろ実質的な役割はネットワークを組織する機能にあるということである。第二には、前述の定義に照らして「資源産業」には属さない総合商社が資源調達システムにおいて大きな役割を果たしている半面、「資源産業」に属する国内の鉱業企業は限定的な役割を果たすにすぎない場合が多かったということである。「資源ビジネス」をタイトルにかかげつつも鉱業企業ではなく総合商社を主たる対象としているのはこのような事情を反映したものである。

また、総合商社と製錬・精製企業とのあいだは企業集団として結びついている場合が多い。一方、製錬・精製企業はグループ商社や系列商社をもっている。そこでこれらのあいだの違いがどこにあるかということが論点となる。