開発輸入と関連商権の展開
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市場で競争がどれほど激しくなるかは、企業が何社あるかだけでは決まりません。企業が市場の大部分を占めているのか、新しい企業が簡単に参入できるのか、消費者が商品を自由に乗り換えられるのかによって、競争の姿は大きく変わります。

たとえば、同じような商品を多数の企業が販売していれば、消費者は価格を比較し、少しでも安い商品へ移りやすくなります。反対に、特定のブランドへの愛着が強く、ほかの商品に乗り換えにくい市場では、企業は多少高い価格を設定しても顧客を維持できるかもしれません。また、企業数が少なくても、新しい企業が容易に参入できる市場では、既存企業が高い価格を維持し続けることは難しくなります。

このように、競争のあり方を理解するには、市場の範囲を明らかにしたうえで、企業の集中度、参入障壁、製品差別化を分析する必要があります。これらの要因が企業の市場支配力を左右し、価格、利益、消費者の選択肢、さらには競争政策のあり方にも影響を及ぼします。

Contents

1. 市場構造を分析する意味

市場構造とは何か

市場構造とは、ある市場において企業がどのように分布し、どの程度の競争圧力にさらされているかを示す特徴です。企業の数や規模、上位企業への集中度、新規参入の難しさ、商品同士の違いなどが主な分析対象になります。

市場構造を考えるときに重要なのは、企業の数だけを見て競争の強さを判断しないことです。企業が10社存在していても、上位2社が市場の大部分を占めていれば、残りの企業が競争に与える影響は小さいかもしれません。反対に、現在の企業数が少なくても、新規企業が容易に参入できるなら、既存企業は潜在的な競争相手を意識せざるを得ません。

また、企業数や市場シェアが同じでも、商品が同質的なのか、ブランドや品質によって差別化されているのかによって、価格競争の強さは変わります。

市場構造と市場支配力の関係

市場支配力とは、企業が競争相手や消費者の反応に強く制約されず、価格などの取引条件を自社に有利な方向へ動かせる力を指します。

市場支配力が弱い企業は、価格を引き上げると顧客が競合企業へ移ってしまうため、価格設定に大きな自由を持ちにくくなります。一方、競争相手が少なく、参入も難しく、顧客が自社の商品を強く選好している企業は、価格を引き上げても顧客を失いにくい可能性があります。

ただし、市場シェアが大きいことだけで市場支配力が強いと断定することはできません。新規参入が容易であれば、価格を引き上げた企業に対して新たな競争相手が現れる可能性があります。市場支配力を判断するには、複数の要因を組み合わせて考える必要があります。

2. 市場の画定――どこまでを同じ市場と考えるのか

市場の範囲を決める必要性

競争の強さを分析するためには、最初に「何と何が同じ市場に属するのか」を決めなければなりません。この作業を市場の画定と呼びます。競争政策では「一定の取引分野」を画定するという表現も用いられます。

たとえば、ある企業が清涼飲料水の市場で大きなシェアを持っていたとしても、飲料全体を市場と考えるのか、炭酸飲料だけを市場と考えるのかによって、その企業のシェアは変わります。さらに、特定の地域で販売される商品だけを対象にするのか、全国を対象にするのかによっても、競争相手の範囲は異なります。

市場を狭く設定しすぎれば、実際には競争相手となる商品や企業を見落としてしまいます。反対に、広く設定しすぎれば、消費者にとって代替しにくい商品まで同じ市場に含めてしまい、企業の市場支配力を過小評価するおそれがあります。

代替性から市場の境界を考える

市場を画定するうえで重要なのは、消費者がある商品から別の商品へ乗り換えるかどうかです。ある商品の価格が上がったとき、多くの消費者が別の商品を購入するのであれば、それらの商品は互いに代替性が高いと考えられます。

たとえば、あるブランドのミネラルウォーターの価格が上昇した場合、消費者が別のブランドの水へ容易に切り替えるなら、ブランドが違っていても競争関係は強いといえます。しかし、特定の用途や品質が求められ、ほかの商品では代替できない場合には、同じ市場に含めるべきか慎重に検討する必要があります。

この代替性を考えるための指標の一つが、需要の交差弾力性です。これは、ある商品の価格変化に対して、別の商品の需要量がどの程度変化するかを示します。ある商品の価格が上昇したときに別の商品の需要が増えるなら、両者は代替関係にある可能性があります。

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価格を少し引き上げたら何が起こるか

市場の境界を考えるための方法として、SSNIPテストという考え方があります。これは、仮にある商品群を供給する企業が、価格を小幅ではあるものの無視できない程度に、一定期間引き上げたとしたら、利益を確保できるかを考える方法です。

値上げによって多くの消費者が別の商品へ移り、値上げした企業の利益がかえって減るのであれば、代替商品を同じ市場に含める必要があるかもしれません。逆に、消費者があまり乗り換えず、値上げが利益の増加につながるなら、その商品群を一つの市場として捉えられる可能性があります。

ただし、実際の市場画定では価格以外にも、商品の用途、品質、取引条件、地理的な範囲などを検討します。市場の画定は、単なる分類作業ではなく、どの企業が実質的な競争相手なのかを明らかにするための分析です。

3. 市場集中――市場を支配する企業はどれほど多いのか

市場シェアから企業の力関係を把握する

市場の範囲を決めたら、次に、企業がどの程度の規模で市場に参加しているかを調べます。その基本的な指標が**市場シェア(市場占有率)**です。市場全体の売上高や販売数量に占める、個々の企業の割合を表します。

たとえば、ある市場の年間売上高が1,000億円で、企業Aの売上高が400億円なら、企業Aの市場シェアは40%です。企業Aが市場の4割を占めていることが分かります。

市場シェアが大きい企業は、生産量や販売網、ブランド認知などで有利な立場にある可能性があります。また、競争相手が少なければ、競争相手の行動を予測しながら価格や生産量を決めやすくなる場合もあります。

ただし、市場シェアはあくまで市場構造を捉えるための出発点です。市場シェアが大きくても、消費者が簡単に他社の商品へ乗り換えられたり、新しい企業が容易に参入できたりするなら、企業は強い競争圧力を受けます。

上位企業集中度――市場の中心にいる企業を見る

市場の集中度を測る指標の一つが、上位企業集中度です。代表的なものに、上位4社集中度(CR4)があります。これは、市場シェアが大きい上位4社のシェアを合計した値です。

仮に、ある市場で上位4社の市場シェアがそれぞれ35%、25%、15%、10%であれば、CR4は85%です。上位4社が市場の85%を占めているため、市場の供給が少数の企業に集中していることが分かります。

一方、上位4社のシェアがそれぞれ15%、12%、10%、8%であれば、CR4は45%です。この場合、上位企業だけでは市場全体を占めておらず、ほかの企業も一定の役割を果たしていると考えられます。

CR4は計算が簡単で、市場の大まかな構造を把握するのに便利です。ただし、上位4社の内部でシェアがどのように分布しているかや、5位以下の企業の規模までは十分に表せません。上位企業の合計シェアが同じでも、最大企業が突出している市場と、上位企業が比較的均等な市場とでは、競争の状況が異なる可能性があります。

ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)

こうした違いをより細かく把握するために使われる指標が、**ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)**です。各企業の市場シェアを二乗して合計することで求められます。

HHI=∑i=1nsi2HHI=\sum_{i=1}^{n}s_i^2HHI=i=1∑nsi2

ここで、sis_isi は各企業の市場シェア、nnn は市場に存在する企業数です。市場シェアを百分率で表す場合は、百分率の数値をそのまま二乗して合計します。

たとえば、4社が市場を均等に分け合い、それぞれのシェアが25%であれば、HHIは次のようになります。

252+252+252+252=250025^2+25^2+25^2+25^2=2500252+252+252+252=2500

一方、4社のシェアが70%、10%、10%、10%であれば、HHIは次のようになります。

702+102+102+102=520070^2+10^2+10^2+10^2=5200702+102+102+102=5200

どちらも4社の市場ですが、後者では最大企業のシェアが突出しているため、HHIが大きくなります。つまり、HHIは企業数だけでなく、企業間の規模の偏りも反映します。

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集中度が高ければ競争は弱いのか

一般に、市場集中度が高いと、少数の企業が市場の大部分を占めているため、価格や生産量に影響を与える力が強くなる可能性があります。しかし、集中度が高いことだけで競争が弱いと結論づけることはできません。

たとえば、少数の企業しか存在しない市場でも、海外企業が容易に参入できるなら、既存企業は価格を引き上げにくくなります。反対に、多数の企業が存在していても、各企業が独自のブランドや顧客基盤を持ち、互いに強い差別化を行っている場合には、消費者が企業間を自由に乗り換えられないことがあります。

市場集中度は市場構造を把握するための重要な指標ですが、参入障壁や製品差別化などと組み合わせて評価する必要があります。

4. 参入障壁――新しい企業は簡単に市場へ入れるのか

参入障壁が市場の競争を左右する

市場構造を決める重要な要因の一つが、参入障壁です。参入障壁とは、新しい企業が市場に参入し、既存企業と競争することを難しくする要因を指します。

仮に、既存企業が高い利益を上げていたとしても、ほかの企業が容易に参入できるなら、その利益を目当てに新規参入が起こる可能性があります。新しい企業が供給を増やせば、価格競争が強まり、既存企業の利益は減少するかもしれません。

逆に、新規参入に巨額の投資が必要であったり、既存企業に大きな費用面の優位性があったりする場合には、利益が見込める市場であっても新しい企業は参入しにくくなります。その結果、既存企業が市場支配力を維持しやすくなる可能性があります。

重要なのは、現在の企業同士の競争だけでなく、参入してくる可能性のある企業からの圧力も考えることです。現実に新しい企業が存在しなくても、参入の脅威が既存企業の価格設定を制約することがあります。

規模の経済性による障壁

参入障壁の代表的な要因が、規模の経済性です。規模の経済性とは、生産規模が大きくなるにつれて、製品1単位当たりの平均費用が低下することをいいます。

たとえば、工場の建設や設備の導入に多額の固定費がかかる産業では、生産量が少ないうちは製品1単位当たりの費用が高くなります。大量生産ができる既存企業は、固定費を多くの製品に分散させることができるため、低い費用で製品を供給できる場合があります。

新規企業が小規模で参入すれば、既存企業よりも高い費用を負担することになります。かといって、既存企業に対抗できるほど大規模な設備を整えようとすれば、巨額の投資が必要です。さらに、大量生産によって市場全体の供給量が増えれば、価格が下落する可能性もあります。

このような構造は、石油精製、自動車、鉄鋼など、設備投資が大きく、効率的な生産規模が大きい産業で問題になります。

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必要資本量による障壁

参入するために必要な資金が大きいことも、参入障壁になります。工場や生産設備のほか、物流網、販売拠点、情報システムなどを整備するために、多額の投資が必要な場合があります。

資金を調達できる企業は限られるため、資本集約的な産業では、新規企業が市場に参入すること自体が難しくなります。また、参入後すぐに十分な収益を得られるとは限らないため、投資回収までの期間が長いことも参入をためらわせる要因になります。

たとえば、自動車産業では、製造工場だけでなく、部品供給網、品質管理体制、販売・整備網なども必要です。製品を一つ開発すればすぐに市場で競争できるわけではありません。こうした複数の条件を満たす必要があるため、参入に必要な資金と組織能力が大きな障壁になります。

絶対的費用優位性

既存企業が新規企業よりも低い費用で生産できる場合、参入はさらに難しくなります。このような費用面の優位性は、絶対的費用優位性と呼ばれます。

既存企業が独自の生産技術を持っていたり、原材料を有利な条件で調達できたり、経験の蓄積によって生産効率を高めていたりすると、新規企業は同じ価格で販売しても十分な利益を得られない可能性があります。

また、長年の事業活動を通じて、顧客との関係や流通網、ブランドの信頼を築いている企業は、事業を始めたばかりの企業よりも有利な立場に立ちやすくなります。参入障壁は工場や設備のような目に見える資産だけでなく、長い時間をかけて形成される能力にも存在します。

サンクコスト――撤退しても回収できない費用

参入障壁を考えるうえでは、サンクコスト(埋没費用)も重要です。サンクコストとは、いったん支出すると、事業から撤退しても回収できない費用を指します。

特定の製品専用に設計した設備や、特定の市場でしか使えないシステムの導入費用などが、その例になります。市場への参入がうまくいかなかったとき、設備を別の用途に転用できたり、資産を売却して投資を回収できたりするなら、撤退による損失は小さくなります。しかし、投資の多くが回収できない場合には、参入のリスクが高まります。

このため、新規企業は参入によって得られる利益だけでなく、失敗した場合にどの程度の費用を失うかも考慮しなければなりません。市場が魅力的に見えても、撤退時の損失が大きければ参入を見送ることがあります。

研究開発、スイッチング・コスト、資産の特殊性

参入障壁には、研究開発の集約度、資産の特殊性、スイッチング・コストなどもあります。

研究開発集約度が高い産業では、製品を市場に投入するまでに長期間の研究開発が必要となり、多額の費用がかかります。医薬品や先端技術の分野では、研究開発の成果を得られる保証がないことも、参入を難しくする要因になります。

資産の特殊性とは、ある取引や用途に特化した設備・資産が、別の用途では十分に活用できない性質を指します。特定の顧客や製品のために専用設備を整備する必要がある場合、参入企業は投資の回収リスクを負います。

スイッチング・コストは、消費者が現在利用している商品やサービスから、別の商品やサービスへ乗り換える際に発生する費用や負担です。金銭的な費用だけでなく、操作方法を学び直す手間、データを移行する負担、既存システムとの互換性の問題なども含まれます。

たとえば、企業が業務システムを別の製品に切り替える場合、ソフトウェアの購入費だけでなく、従業員の再教育やデータ移行、既存業務の変更も必要になります。新しい製品のほうが優れていても、乗り換えに伴う負担が大きければ、顧客は現在の製品を使い続ける可能性があります。

法的・行政的規制による障壁

政府による免許、許可、資格要件なども、参入障壁になることがあります。放送、運輸、エネルギーなどの分野では、事業を行うために一定の許認可や制度上の条件を満たす必要があります。貿易における関税や非関税措置、外資規制なども、場合によっては参入の難しさに影響します。

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ただし、規制があること自体を問題とみなすのは適切ではありません。安全性の確保、安定供給、利用者保護など、規制には公共的な目的がある場合もあります。重要なのは、規制がどのような目的で設けられ、競争や新規参入にどのような影響を及ぼしているかを区別して考えることです。

5. 参入障壁の高さは、既存企業の行動にも影響する

参入しにくい市場では何が起こるのか

参入障壁が高い市場では、既存企業が競争相手から受ける圧力が弱くなる可能性があります。新しい企業が容易に参入できないため、既存企業は価格を引き上げたり、利益率を高く維持したりしやすくなる場合があります。

しかし、参入障壁が高いからといって、必ずしも既存企業が高い利益を得られるとは限りません。需要が小さかったり、生産費用が高かったりすれば、参入が難しくても利益は上がりません。また、既存企業同士の競争が激しければ、参入障壁が高い市場でも価格競争が起こります。

したがって、参入障壁は市場支配力を理解するうえで重要ですが、企業の収益性を単独で決める要因ではありません。

参入障壁と退出障壁は異なる

参入の難しさと、市場から撤退する難しさは区別する必要があります。参入障壁が高い市場では、新しい企業が入りにくくなります。一方、退出障壁が高い市場では、既存企業が事業をやめることも難しくなります。

たとえば、専用設備や特定用途にしか使えない資産に多額の投資をしている企業は、事業の採算が悪化しても、資産を売却して投資を回収することが難しい場合があります。そのため、赤字が続いても事業を継続することがあります。

参入と退出の両方を考えることで、市場にどのような企業が残り、どのような競争が続くのかをより深く理解できます。

6. 製品差別化――同じような商品でも競争の仕方は変わる

製品差別化とは何か

市場構造を決めるもう一つの重要な要因が、製品差別化です。製品差別化とは、自社の商品が他社の商品とは異なるものとして消費者に認識されるようにする企業の行動を指します。実際の品質や機能の違いだけでなく、ブランド、デザイン、広告、利用経験などによって、消費者が商品を異なるものとして認識することも含まれます。

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たとえば、即席めん、チョコレート、清涼飲料水、日本酒などでは、似た用途の商品が多数販売されています。しかし、消費者は味、品質、価格、ブランド、パッケージなどを基準に選択します。あるブランドに強い愛着を持つ消費者は、多少価格が高くても同じブランドを選ぶかもしれません。

製品差別化が強い場合、企業は単純な価格競争だけで顧客を獲得する必要がなくなります。消費者が自社の商品を特別なものと認識していれば、価格以外の要素によって競争できるからです。

同質的な商品と差別化された商品

商品が同質的である場合、消費者は企業間の価格を比較しやすくなります。商品の品質や用途に大きな違いがなければ、少しでも安い企業へ乗り換える誘因が強まります。その結果、企業は価格競争に巻き込まれやすくなります。

一方、商品が差別化されていれば、消費者は価格以外の要素も考慮して購入先を選びます。品質、デザイン、使いやすさ、ブランドへの信頼などが購入判断に影響するため、企業は価格を多少高く設定しても顧客を維持できる可能性があります。

たとえば、鉄鋼のように製品の規格や性能が重視される産業では、消費財と比べてブランドによる差別化が限定的な場合があります。これに対して、自動車、飲料、化粧品などでは、品質やデザイン、ブランドイメージなどが消費者の選択に影響しやすくなります。一般に、消費財は中間財や投資財よりも製品差別化が形成されやすい傾向があります。

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製品差別化は実質的な違いだけではない

製品差別化というと、性能や品質に明確な違いがある場合を想像しがちです。しかし、消費者が商品をどう認識するかも重要です。実際には非常によく似た商品であっても、消費者が別々のブランドの商品として認識し、異なる選好を持つなら、企業間の競争は変わります。

このことは、企業が広告やブランド戦略に力を入れる理由の一つです。消費者に自社の商品を認識してもらい、競合商品とは異なる価値を感じてもらうことができれば、価格だけで比較される状況を避けやすくなります。

ただし、差別化によって消費者の選択肢が増えることと、競争が弱まることは、必ずしも同じではありません。消費者にとって価値のある違いが生まれる一方で、ブランドへの強いこだわりが乗り換えを難しくし、企業の価格設定力を高める場合もあります。

7. 広告による非価格競争――企業は価格以外の方法で競う

広告は商品を知らせるだけではない

企業の競争は、価格を引き下げることだけで行われるわけではありません。広告によって商品の特徴を伝えたり、ブランドイメージを形成したりすることも、重要な競争手段です。価格以外の手段を使って競争することを、非価格競争と呼びます。

広告には、消費者に商品やサービスの存在を知らせ、品質や機能についての情報を提供する役割があります。消費者が商品を知らなければ、性能が優れていても購入の対象になりません。広告は、消費者が選択するために必要な情報を伝えることができます。

一方で、広告は消費者の認識やブランドへの愛着にも影響します。繰り返し広告を目にすることで商品に親しみを感じたり、ブランドに対する信頼が形成されたりする場合があります。その結果、消費者は価格だけではなく、ブランドへの好みを基準に購入するようになることがあります。

広告と参入障壁の関係

広告は製品差別化を進めるだけでなく、新規参入を難しくする要因にもなり得ます。

既存企業が長年にわたって広告を行い、強いブランド認知を築いている場合、新規企業は同じように消費者に認知されるために多額の広告費を投じなければならないかもしれません。商品自体が優れていても、消費者に知られていなければ販売を伸ばすことは難しくなります。

さらに、広告によって消費者が特定のブランドを強く選好するようになると、新規企業が価格を引き下げても、顧客を獲得しにくくなる場合があります。こうして広告は、既存企業の市場での地位を強化し、新規参入の障壁として働くことがあります。

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製品差別化の程度を推測する際には、広告費や広告費の売上高比率が指標として用いられます。ただし、広告費が大きいからといって、必ずしも差別化が強いとは限りません。広告が情報提供に使われている場合もあり、広告費だけで競争状態を判断することはできません。

消費者にとって広告は利益か、それとも負担か

広告には、商品の情報を提供し、消費者が自分に合った商品を見つける手助けをする面があります。企業が商品の特徴を分かりやすく伝えれば、消費者は選択に必要な情報を得やすくなります。

しかし、広告がブランドへの愛着を強めることで、消費者が価格や品質を十分に比較しなくなる可能性もあります。企業が広告によって顧客を囲い込み、価格競争を弱める場合には、消費者が高い価格を支払うことになるかもしれません。

したがって、広告の効果を評価する際には、情報提供によって消費者の選択が改善される側面と、ブランドへのこだわりが競争を弱める側面の両方を考える必要があります。

8. 市場構造を総合的に理解する

集中度・参入障壁・製品差別化の相互作用

市場構造を分析するときには、市場集中度、参入障壁、製品差別化を個別に見るだけでは十分ではありません。これらは互いに影響し合い、競争の強さを決めています。

たとえば、市場シェアが少数企業に集中していても、新しい企業が容易に参入できれば、既存企業は競争相手の出現を警戒する必要があります。反対に、市場集中度がそれほど高くなくても、各企業が強いブランドを持ち、消費者が乗り換えにくい場合には、価格競争が弱まる可能性があります。

また、規模の経済性が大きい市場では、既存企業が大規模生産によって費用面で優位に立ち、新規企業が参入しにくくなることがあります。既存企業がさらに広告を行い、ブランドを強化すれば、参入障壁は一層高まるかもしれません。

このように、企業の規模、参入の難しさ、消費者の選好が組み合わさることで、市場の競争環境が形づくられます。

市場構造から企業行動を予測する

市場構造を分析する目的は、市場を分類することだけではありません。企業がどのような行動を取りやすいかを考え、競争の結果を予測することにもあります。

市場集中度が高く、参入障壁も高い場合には、既存企業が価格や生産量に大きな影響を及ぼせる可能性があります。商品が同質的で参入も容易な場合には、価格競争が強まり、企業は費用削減や生産効率の向上を重視するかもしれません。製品差別化が強い場合には、広告、ブランド、デザイン、サービスの改善など、価格以外の競争が重要になります。

もちろん、こうした関係は絶対的な法則ではありません。需要の変化、技術革新、消費者の行動、企業間の戦略的な相互作用などによって、実際の結果は変わります。それでも、市場構造を把握することで、企業がどのような制約を受け、どのような戦略を選択しやすいかを体系的に考えられます。

9. まとめ――市場の姿を理解することが競争分析の出発点

市場構造を理解するためには、まず、どの商品や地域を一つの市場とみなすかを明確にする必要があります。そのうえで、市場シェアや上位企業集中度、HHIなどの指標を使い、企業の規模や市場の集中度を把握します。

しかし、集中度だけでは競争の強さを十分に判断できません。新規企業が市場に参入しやすいかどうか、既存企業が規模の経済性や費用面の優位性を持っているか、広告やブランドによって商品が差別化されているかも重要です。

参入障壁が高ければ、既存企業は新しい競争相手から受ける圧力が弱くなる可能性があります。製品差別化が強ければ、消費者は価格だけで商品を比較しなくなり、企業はブランドや品質を通じて競争することができます。広告は情報提供の手段であると同時に、ブランド形成や参入障壁の強化にも関係します。

市場構造を分析することは、単に企業の数を数えることではありません。どの企業が、どのような競争相手と向き合い、どれほど自由に価格や取引条件を決められるのかを明らかにすることです。この視点を持つことで、企業の経営戦略だけでなく、企業合併や独占禁止政策など、競争政策の問題も理解しやすくなります。