開発輸入と関連商権の展開
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1. 外国為替とは何か――国境を越える取引を「決済」する仕組み

国際貿易では、商品を国境の向こう側へ送っただけでは取引は完了しない。輸出した企業は代金を受け取らなければならず、輸入した企業は代金を支払わなければならない。ところが、日本企業がアメリカ企業と取引するとき、日本円と米ドルという異なる通貨が使われる。

そこで必要になるのが外国為替である。

外国為替とは、貿易や資本輸出などの国際取引によって生じる送金・決済を、現金そのものを国境を越えて運ぶのではなく、為替手形などの信用手段を利用して行う仕組みである。つまり外国為替は、国際貿易を可能にする「お金の輸送装置」と考えると分かりやすい。

たとえば、日本からアメリカへ1億円相当の商品を輸出したとして、その代金を現金のドルで日本まで運ぶ必要があるとしたら、非常に不便である。銀行を仲介させ、金融機関同士の債権・債務関係を利用すれば、実際の現金輸送を大幅に減らすことができる。

ここに外国為替の経済的な意味がある。

外国為替とは、国際的な債権・債務を、銀行などを介して効率的に決済するための信用の仕組みなのである。

2. 並為替と逆為替――お金を送るのか、取り立てるのか

外国為替による送金には、大きく二つの形態がある。

一つが**並為替(送金為替)であり、もう一つが逆為替(取立為替)**である。

並為替――送金する側から始まる

並為替では、東京の送金人が日本の為替銀行に日本円を支払い、銀行から外国為替手形を受け取る。その手形を外国の受取人に送り、受取人が現地の銀行に提示して外国通貨を受け取る。

最後には日本の銀行と外国の銀行との間で帳簿上の貸借関係が処理され、決済される。

ここで重要なのは、東京からニューヨークまで大量の現金を運んでいるわけではないということだ。

銀行間の信用と帳簿上の決済によって、国境を越える支払いを実現している。

逆為替――代金を取り立てる

逆為替は、貿易取引との関係で特に重要になる。

たとえば日本の輸出企業がアメリカへ商品を輸出した場合、商品を船積みすると船積書類を受け取る。その書類と外国為替手形を銀行へ持ち込み、銀行がその手形を買い取る。

アメリカ側の銀行は輸入企業に手形を提示し、輸入企業が代金を支払う。その支払いと引き換えに船積書類を受け取るため、輸入企業はその書類を使って商品を引き取ることができる。

ここでは、商品、船積書類、為替手形、銀行信用が一つの仕組みとして結びついている。

3. なぜ貿易では逆為替が重要なのか

貿易には、国内取引にはない大きな問題がある。

それは、商品が移動するのに時間がかかることである。

日本からアメリカへ商品を船で送る場合、輸出企業が商品を発送してから輸入企業の手元に届くまで時間がかかる。

もし輸入企業が商品を受け取る前に代金を払えば、輸入企業にとっては、

「お金を払ったのに、商品が届かない」

というリスクが生まれる。

反対に、商品を受け取ってから代金を払うなら、

「商品を送ったのに、代金を回収できない」

というリスクを輸出企業が負う。

そこで銀行が介在する。

輸出企業が輸出した商品に関する為替手形を銀行が買い取り、輸入企業から代金を回収する仕組みを利用すれば、輸出企業は代金を早く受け取ることができる。

ここで銀行が行うのが貿易金融である。

外国為替は、単なる「外国のお金との交換」ではない。実際には、国際貿易にともなう信用供与と決済を組み合わせた金融制度なのである。

4. 為替銀行は国際取引をどのように仲介するのか

外国為替の仕組みを理解するときに重要なのが、銀行同士の関係である。

日本の銀行Xとニューヨークの銀行Yがあり、それぞれが相手銀行との間に為替勘定を持っているとする。

日本の輸出企業とアメリカの輸入企業の間で取引が成立すると、企業同士の債権・債務が発生する。しかし、最終的な決済は企業同士が直接現金をやり取りするのではなく、X銀行とY銀行の間の債権・債務へと置き換えられる。

つまり、

企業間の債権・債務
→ 銀行間の債権・債務
→ 銀行間の帳簿決済

という形に変換される。

この仕組みによって、国際的な現金輸送を大幅に節約できる。

銀行同士がどのように決済するのかをあらかじめ取り決めておく契約が、コルレス契約である。

現在の国際金融を理解するときにも、この「銀行間の決済ネットワーク」という視点は重要である。国際送金が電子化された現代でも、最終的には金融機関同士の債権・債務をどう処理するかという問題が存在しているからである。

5. 為替相場とは何か――「1ドル=何円」という数字の意味

外国為替を考えると、次に問題になるのが為替相場である。

「1ドル=150円」

「1ユーロ=160円」

といった数字が為替相場である。

一見すると単純な交換比率に見えるが、為替相場がなぜその水準になるのかという問題は、貿易理論・貨幣論・信用論・国際収支論を横断する大きな理論問題になってきた。

外国為替取引は、実際には外国為替手形などの売買という形をとる。そのため、単純化すれば、外国為替市場における需要と供給によって為替相場が変動すると考えることができる。

しかし、それだけでは「なぜ需要が増えるのか」「なぜ供給が増えるのか」という根本問題が残る。

そこで、さまざまな為替相場理論が登場することになる。

6. 国際貸借説――為替相場を国際収支から説明する

古典的な為替理論の重要な一つが、G・J・ゴッシェンの国際貸借説である。

考え方は比較的分かりやすい。

日本からアメリカへ支払う金額が、アメリカから日本へ支払われる金額より大きければ、ドルに対する需要が増える。

反対に、アメリカから日本へ支払われる金額のほうが大きければ、日本円に対する需要が強くなる。

つまり、

国際的な受け払いの差額
→ 外国為替の需要・供給
→ 為替相場の変動

という関係を考える。

ゴッシェンが重要なのは、国際貸借を商品貿易だけに限定しなかったことである。利子・利潤の受け払い、外国人旅行者の支出なども国際的な受け払いを生み、それが為替相場に影響すると考えた。

これは、前章の国際収支論とも直接つながる。

7. 国際貸借説の限界――資本移動をどう考えるか

しかし、国際経済が発展すると、単純な貿易収支だけでは為替相場を説明できなくなる。

たとえば日本がアメリカから100億ドル輸入していても、アメリカ企業が日本へ200億ドル投資すれば、資本移動によって為替市場に生じる資金の流れは大きく変わる。

つまり、

商品がどれだけ売買されたか

だけではなく、

資本がどちらへ移動したのか

を見る必要がある。

このため国際貸借説は、国際資本移動が活発になるにつれて、より包括的な国際収支説へと再構築される必要が生じた。

この点は非常に重要である。

前章で見た国際収支と、ここで扱われる外国為替は別々のテーマではない。

国際収支は国際取引の結果を記録する帳簿であり、外国為替市場はその取引を決済するための市場である。

両者は密接に結びついている。

8. 購買力平価説――為替レートは物価で決まるのか

為替相場のもう一つの有名な理論が、G・カッセルの**購買力平価説(PPP)**である。

この考え方は、

同じ金額のお金なら、各国で同じような購買力を持つはずではないか

という発想から出発する。

たとえば日本で同じ商品を1000円、アメリカで10ドルで購入できるなら、理論上は、

1ドル=100円

程度が一つの均衡的な為替水準になる。

もちろん現実には、輸送費、関税、サービス価格、税制などがあるので、単純に一致するわけではない。

カッセルが重視したのは、特にインフレーションが進んだ時代において、各国の物価上昇率の違いから「どの程度の為替相場が均衡的なのか」を推計することだった。

基準となる時点の為替相場に、その後の両国の物価指数の変化を反映させることで、購買力平価を算定するという方法である。

9. 購買力平価説にも限界がある

購買力平価は現在でも非常に有名な考え方だが、それだけで為替相場を完全に説明できるわけではない。

第一に、商品価格だけを基準にすると、国際的な資本移動を十分に説明できない。

海外から巨額の投資資金が流入すれば、その国の通貨に対する需要が増える。しかし、それは物価指数だけでは説明できない。

第二に、物価指数はさまざまな商品の価格を平均したものである。すべての商品価格が同じ割合で変化するわけではない。

第三に、自由貿易を前提にしてしまうと、関税や輸入規制などが為替相場に与える影響を捉えにくい。

したがって、

「物価が違うから為替が動く」

だけではなく、

「貿易、資本移動、金利、国際収支などが複合的に為替を動かす」

と考える必要がある。

10. 為替相場は「両替レート」なのか

為替相場の本質をどう理解するかについては、マルクス経済学の内部でも議論が存在する。

一つの立場は、為替相場を二国の貨幣の交換比率として捉える考え方である。

「1ドル=150円」という表示を見れば、確かにこれは円とドルの交換比率を示している。

この意味では、為替相場は両替相場が発展したものとして理解できる。

ただし、ここで問題になるのは、金平価と実際の為替相場は同じではないという点である。

金本位制のように各国通貨と金との関係が固定されていたとしても、実際の為替市場では需給によって為替相場が平価から乖離することがある。

つまり、

制度上の交換比率

と

市場で実際に成立する交換比率

を区別する必要がある。

11. マルクスの為替相場論――為替は信用の問題でもある

マルクスは為替相場の変動要因として、国際収支、貨幣価値の変動、金・銀の相対価値などを取り上げている。

特に重要なのは、外国為替を単純な「貨幣と貨幣の交換」としてだけではなく、信用制度の特殊な形態として捉えている点である。

これは外国為替の実際の仕組みを考えると分かりやすい。

企業が外国へ支払うために、毎回現金を国境の向こうへ運んでいるわけではない。

銀行が企業に信用を供与し、銀行同士が債権・債務を形成し、その差額を決済している。

つまり外国為替の背後には、

貨幣
→ 為替手形
→ 銀行信用
→ 銀行間決済

という信用関係がある。

ここに「為替は信用制度の一形態である」という考え方の意味がある。

12. 「現金を運ぶ費用」が為替を生み出す

外国為替をさらに深く理解するためには、非常に素朴な問題から考えるとよい。

仮に日本からアメリカへ1000万円を支払う必要があり、それを本当に現金で運ぶとしたらどうなるだろうか。

警備、輸送、保険、時間など、さまざまな費用がかかる。

しかし、日本企業がアメリカ企業に支払う一方で、別のアメリカ企業が日本企業に支払う必要があるなら、両方の現金をわざわざ国境を越えて運ぶ必要はない。

銀行がそれらの債権・債務を相殺し、差額だけを決済すればよい。

つまり、

為替制度は、国際的な現金輸送を節約するための仕組み

として発展したと考えることができる。

この視点から、川合一郎は為替を信用論の観点から分析し、為替相場を「為替利子」と関連づけて捉えた。

ここでいう「為替利子」という概念は、通常の預金金利や貸出金利と同じものではない。国境を越えて現金を移動させる費用を節約するための信用関係と、その負担の転嫁を考えるための概念である。

13. なぜ外国為替には「相場」があるのか

国内の銀行間決済では、中央銀行を利用した集中決済制度が発達すれば、地域間の現金輸送をほとんど意識せずに済む。

ところが国際取引では、異なる国家の通貨を使っている。

しかも各国の金融制度、金利、国際収支、通貨制度が異なる。

そのため、

日本円とドルを交換するには、単なる帳簿上の移動だけでは済まない。

そこに為替相場が発生する。

外国為替市場では、ある通貨を欲しがる主体と、その通貨を提供する主体が存在する。その需給関係によって市場相場が形成される。

ただし、その需給の背後には、貿易、投資、国際収支、金利差、銀行信用などが存在する。

したがって為替相場は、

「市場の需給で決まる」

と説明するだけでは十分ではなく、

「なぜその需給が生まれているのか」

まで掘り下げる必要がある。

14. 金利差と為替相場――お金は金利の高いところへ動く

外国為替を理解するうえで、もう一つ重要なのが金利である。

たとえば、日本の金利が1%、アメリカの金利が5%だったとする。

為替リスクなどを無視すれば、投資家にとってはドル資産のほうが魅力的に見える。

すると日本からアメリカへ短期資金が移動する可能性がある。

逆に、日本の金利がアメリカより高くなれば、日本円で運用する魅力が相対的に高くなる。

こうした金利差を利用して資金を移動させる取引が、金利裁定取引である。

為替市場では、こうした短期資本移動が非常に大きな影響を持つ。

このことから、為替相場は単なる「貿易商品の値段」ではないことが分かる。

為替市場は、世界中の資金が移動する巨大な金融市場でもある。

15. 金本位制はなぜ為替相場を安定させたのか

金本位制では、各国通貨と金との交換関係が制度的に定められていた。

そのため、通貨そのものの価値が無制限に変化することが抑制された。

さらに、一定範囲を超えて為替相場が動くと、金を海外へ輸送したほうが有利になる。

たとえば、

「ドルを買うために非常に高いコストを払う」

よりも、

「金をアメリカへ送ってドルを受け取る」

ほうが安ければ、金の移動が発生する。

このため為替相場は一定の範囲から大きく離れにくくなる。

これが金本位制における金輸出点・金輸入点の考え方である。

金本位制は、単に「紙幣を金と交換できる制度」だったのではない。

国際的な為替相場を一定範囲に安定させる仕組み

でもあった。

16. 金本位制の崩壊と為替政策

国際金本位制は19世紀後半に広がったが、第一次世界大戦によって大きな打撃を受け、戦後に再建されたものも1930年代の世界恐慌によって崩壊した。

金本位制が停止すると、各国通貨を金と交換する仕組みが弱くなる。

すると為替相場が大きく変動しやすくなる。

そこで国家が為替市場に介入するようになった。

一つの方法が為替安定基金である。

自国通貨が下落すると、政府・中央銀行が外貨を売って自国通貨を買う。

反対に自国通貨が上昇すると、自国通貨を売って外貨を買う。

こうして市場に介入し、為替相場を安定させようとする。

もう一つの方法が為替管理である。

これは外国為替の取引そのものを国家が管理し、外貨を獲得した企業などから外貨を国家に集中させ、その外貨を必要とする輸入企業などへ配分する仕組みである。

しかし為替管理は、自由な貿易や資本移動を制限することになる。

17. 1930年代の教訓――通貨切り下げ競争が世界を分断した

1930年代には、各国が輸出を増やすために自国通貨の為替相場を引き下げる競争を行った。

自国通貨が安くなれば、外国から見た自国商品の価格が安くなる。そのため輸出を増やせる可能性がある。

しかし、すべての国が同じことを始めればどうなるだろうか。

相手国も通貨を切り下げる。

さらに別の国も切り下げる。

こうして為替切り下げ競争が国際的な経済摩擦を生み、世界貿易を縮小させる方向に働く。

そこで第二次世界大戦後には、

「為替を安定させながら、貿易を自由化する」

という国際的な枠組みが必要になった。

その中心となったのがIMF体制である。

18. IMF体制――固定相場と自由貿易を両立させる試み

戦後のIMF体制は、1930年代の為替管理やブロック経済への反省から生まれた。

基本的な理念は、

自由・多角・無差別

という国際経済秩序である。

同時に、為替相場については固定相場制を採用した。

各国通貨の平価を定め、為替相場がそこから大きく離れないようにする。その一方で、国際収支が一時的に悪化した国にはIMFが資金を供給し、固定相場を維持できるようにした。

さらに、各国通貨の平価はドルを基準に設定され、ドルは金との交換関係を持った。

そのため戦後の国際通貨制度は、

金 → ドル → 各国通貨

という階層的な関係を持つことになった。

これがいわゆるブレトンウッズ体制、すなわち戦後IMF体制である。

19. ニクソン・ショック――固定相場制はなぜ崩壊したのか

しかし、固定相場制は永遠には続かなかった。

アメリカは1960年代以降、海外軍事支出、海外援助、多国籍企業による資本輸出などを背景として国際収支赤字を抱えるようになった。

アメリカから金が流出し、ドルと金との交換関係を維持することが難しくなった。

そして1971年8月、ニクソン大統領がドルと金の交換停止を発表する。

いわゆるニクソン・ショックである。

その後、1971年12月にはスミソニアン協定によって新しい固定相場制が試みられたものの、長続きせず、1973年には主要国が変動相場制へ移行していった。

ここで重要なのは、固定相場制が崩壊したからといってドルそのものが国際通貨として消えたわけではないことである。

むしろ、

固定相場制は崩壊したが、ドル中心の国際通貨体制は形を変えて残った

のである。

20. ドルはなぜ「基軸通貨」になったのか

為替市場では、すべての通貨が同じように扱われるわけではない。

たとえば、円をユーロに交換するとき、円とユーロを直接交換する場合もあるが、国際金融市場では長い間、ドルを媒介として、

円 → ドル → ユーロ

という取引が重要な役割を果たしてきた。

こうした通貨を媒介通貨あるいは車軸通貨と呼ぶことができる。

この意味でドルは単なるアメリカの通貨ではなく、国際的な決済・資金移動を媒介する通貨としての役割を持った。

1990年代初頭の状況については、西欧ではドイツ・マルクがドルと並ぶ媒介通貨として存在感を高め、欧州の通貨統合につながる動きが進んでいた一方、アジアではドルを媒介とする取引が依然として圧倒的だったと整理されている。

21. 為替相場を「円安・円高」だけで考えてはいけない

ここまでを現代的な感覚で整理すると、為替相場は非常に複雑な現象であることが分かる。

たとえば円安が進んだとする。

「日本の輸出競争力が高くなったから円安になった」

という場合もある。

しかし、

「日本と海外の金利差が拡大し、日本から海外へ資金が流れた」

ためかもしれない。

また、

「日本の輸入が増えてドル需要が高まった」

可能性もある。

さらに、

「海外投資家が日本への投資を減らした」

ことが原因かもしれない。

つまり為替相場の変化には、

貿易
国際収支
資本移動
金利差
金融政策
物価
通貨制度
市場参加者の予想

などが複雑に絡んでいる。

ここに為替相場の難しさがある。

22. 「円安は輸出に有利」という説明にも落とし穴がある

円安になると、日本の商品は外国人から見て安くなる。そのため輸出企業にとって有利になる可能性がある。

しかし、日本企業が海外から部品や原材料、エネルギーを大量に輸入している場合には話が変わる。

円安によって輸入価格が上昇するため、輸出企業のコストも上昇する。

たとえば自動車メーカーが100万円分の部品を海外から輸入しているとすれば、円安はその調達コストを押し上げる。

したがって、

円安=輸出企業に必ず有利

ではない。

重要なのは、その国の産業構造がどのようになっているかである。

この問題は、現在のグローバル・サプライチェーンを考えるとさらに重要になる。製品が「日本製」だからといって、すべての部品や原材料が日本国内で生産されているわけではない。海外から部品を輸入し、それを国内で組み立てて輸出する企業も多いからである。

23. 為替相場の変化は、企業・家計・国家を同時に動かす

為替相場が変わると、単に銀行の画面に表示される数字が変わるだけではない。

円安になれば輸入物価が上昇しやすい。

エネルギーや食料などの輸入価格が上がれば、企業のコストが増える。企業がそのコストを販売価格に転嫁すれば、消費者物価も上昇する。

一方で、海外で売上を得る輸出企業や海外子会社を持つ企業には、円換算した収益が増える効果が生じることもある。

つまり為替相場は、

貿易政策の問題であると同時に、物価政策、金融政策、企業経営、家計所得の問題

でもある。

為替相場が重要なのは、これが「外国のお金の値段」だからではない。

為替相場を通じて、世界市場と国内経済が接続されているからである。

24. 外国為替をめぐる理論を一本の線でつなぐ

外国為替をめぐる議論は、一見すると非常に難しい。

しかし、大きな流れをつかめば整理しやすい。

最初に問題になるのは、

「国境を越えた支払いをどうやって行うのか」

という外国為替取引の仕組みである。

そこから、

「その外国為替手形はいくらで売買されるのか」

という為替相場の問題が出てくる。

さらに、

「その相場はなぜ変動するのか」

という理論問題が生じる。

国際貸借説は国際的な受け払いの差額から説明した。

購買力平価説は各国通貨の購買力、つまり物価水準の違いから説明した。

マルクス経済学では、貨幣論だけではなく信用制度や国際的な債権・債務関係から為替を捉えようとした。

そして実際の為替市場では、貿易だけでなく資本移動と金利差が大きな役割を果たす。

この流れをまとめると、

国際取引
↓
債権・債務
↓
外国為替
↓
為替市場
↓
為替相場
↓
貿易・資本移動・金利・国際収支への影響

という一つの循環になる。

25. 外国為替の本当の面白さ――「お金の交換」ではなく「世界経済の接続点」

外国為替というと、「1ドル=何円」という数字を覚えることから始めがちである。

しかし、為替相場の本当の面白さは、その数字の背後に世界経済全体が動いていることにある。

日本企業がアメリカへ自動車を輸出する。

アメリカ企業が日本から製品を購入する。

日本の企業が海外へ工場を建設する。

外国人投資家が日本株を購入する。

日本の投資家がアメリカ国債を購入する。

中央銀行が金融政策を変更する。

こうした一つひとつの取引が、最終的には「どの通貨が必要なのか」という需要を生み出す。

その結果として外国為替市場が動き、為替相場が変化する。

そして為替相場が変化すると、今度は輸出入、企業利益、輸入物価、賃金、消費、投資へと影響が戻ってくる。

つまり外国為替は、

「国と国との間でお金を交換する技術」

にとどまらない。

それは、世界市場と国民経済をつなぐ巨大な信用・金融システムなのである。

そして、この視点に立つと、前章の「国際収支」と外国為替の関係もはっきりする。国際収支が国際取引の結果を示す「影」だとすれば、外国為替市場は、その国際取引を実際に決済し、資金を移動させる「血管」のような役割を果たしている。

そのため為替相場の変化を理解するには、「円が高くなった」「ドルが安くなった」という表面的な動きだけを見るのではなく、貿易、国際収支、資本移動、信用、金利、通貨制度という複数の流れを一つにつなげて考えることが重要になる。